コラム
所得拡大促進税制(賃上げ優遇税制)の見直し

所得拡大促進税制(賃上げ優遇税制)の見直し

※このコラムは「三井住友カードBiz」2021年7月号に掲載されます。


令和3年度税制改正により所得拡大促進税制の見直しが行われました。


1.中小企業向け所得拡大促進税制の延長と適用要件の見直し

新型コロナウイルス感染症の影響で経済が落ち込む中、雇用を守り、賃上げを行う中小企業を支える目的で制度の2年延長(令和3年4月1日から令和5年3月31日)と要件の見直しが行われました。


所得拡大促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。


適用時期 令和5年3月31日までに開始する事業年度
適用要件 雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加
税額控除 雇用者給与等支給額の前年度比増加額の15%
上乗せ要件 (1) 雇用者給与等支給額が前年度比2.5%以上増加
かつ
(2) 下記のいずれかを満たす。
ア・教育訓練費が前年度比10%以上増加
イ・適用年度末までに経営力向上計画の認定を受け、経営力向上につき証明を受ける。
上乗せ控除率 雇用者給与等支給額の前年度比増加額の25%
控除上限 法人税額の20%

※雇用者給与等支給額

適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額

※教育訓練費

適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で一定のもの

※経営力向上計画

中小企業経営強化法に基づき、事業者が、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画。


認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができる。また計画申請においては経営革新等支援機関のサポートを受けることができる。

※雇用調整助成金については、要件を判定する場合には控除せず、税額控除率を乗じる基礎となる雇用者給与等支給額の前年度比増加額について雇用調整助成金等を控除する。


(参考例)

(1) 上乗せ要件を満たさない場合

ア 適用年度  雇用者給与等支給額 100,000,000円

イ 前年度   雇用者給与等支給額  90,000,000円

ウ 税額控除額 (100,000,000円-90,000,000円)×15%=1,500,000円

(2) 上乗せ要件を満たす場合

ア 適用年度  雇用者給与等支給額 100,000,000円

イ 前年度   雇用者給与等支給額  90,000,000円

ウ 税額控除額 (100,000,000円-90,000,000円)×25%=2,500,000円


2.人材確保等促進税制

新型コロナウイルス感染症が経済や社会に甚大な影響を及ぼす中、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた企業の経営改革の実現に向け、新卒・中途採用による外部人材の獲得や人材育成への投資を積極的に行う企業に対し、法人税等の税額控除措置が講じられます。


人材確保等促進税制は、青色申告書を提出している全企業が一定の要件を満たした上で、前年度より新規雇用者に対する給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。


適用時期 令和5年3月31日までに開始する事業年度
適用要件 新規雇用者(新卒・中途採用)給与等支給額が前年度比2%以上増加
税額控除 控除対象新規雇用者給与等支給額の15%
※雇用者給与等支給額の前年度比増加額が上限
上乗せ要件 教育訓練費が前年度比20%以上増加
上乗せ控除率 控除対象新規雇用者給与等支給額の20%
控除上限 法人税額の20%

※新規雇用者給与等支給額

国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額

※控除対象新規雇用者給与等支給額

国内の事業所において新たに雇用した者に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額。(雇用保険法の一般被保険者に限られない)ただし、雇用者給与等支給額の前年度比増加額を上限とするとともに、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度の適用がある場合には所定の調整を行う。

※新規雇用者給与等支給額からは雇用調整助成金等は控除しない。


(参考例)

(1) 上乗せ要件を満たさない場合

ア 適用年度  新規雇用者給与等支給額     4,000,000円

イ 前年度   新規雇用者給与等支給額     3,000,000円

ウ 適用年度  控除対象新規雇用者給与等支給額 5,000,000円

エ 税額控除額 5,000,000円×15%=750,000円

(2) 上乗せ要件を満たす場合

ア 適用年度  新規雇用者給与等支給額     4,000,000円

イ 前年度   新規雇用者給与等支給額     3,000,000円

ウ 適用年度  控除対象新規雇用者給与等支給額 5,000,000円

エ 税額控除額 5,000,000円×20%=1,000,000円

※参考例では控除対象新規雇用者給与等支給額が雇用者給与等支給額の前年度比増加額を上回っていないものとして計算しています。


なお、所得拡大促進税制と人材確保等促進税制は併用不可なので、いずれも適用可能である場合には有利な制度を選択することになります。


米本合同税理士法人では、顧問先のお客様に対して所得拡大促進税制や人材確保等促進税制の詳細なご説明や手続きサポートをさせていただいております。 また、経営革新等支援機関であるため、経営力向上計画の申請サポートも行っております。 ご興味がある方は、ぜひ一度お問い合わせ下さい。

税理士 内田 将希

お気軽にご相談ください。
無料相談のお申込みも受け付けております。

お電話のお問い合わせはこちら

フリーダイヤル 0120-938-563

メールでのお問い合わせはこちら

お問い合わせはこちら

Copyright(c) YONEMOTO GOHDOU Tax Corporation. All Rights Reserved.

PAGE TOP