自社株対策

自社株対策

自社株式が問題になるのは、市場がなく現実的に換金性がないのにも関わらず、その評価額が非常に高く経営者自身が後継者に株式を移転する際に思わぬ税金が発生してしまうケースです。
上場会社の場合は取引相場があり、客観的な価格を入手することが可能ですが、非上場会社の場合はそういった客観的な価格が存在しません。
では、どのようにして評価を決定するのかというと、少数株主に適用するような特例的な評価方法を除き、一般的には、会社の規模、業種等により評価方法が分かれ、基本的には「類似業種比準価額」と「純資産価額」によって決定されます。

一般的に株式の評価額が高くなりやすい会社のパターンは下記のとおりです。

毎期安定して利益を計上している。

#

設立後相当年数が経過しており、純資産の留保額が多い。

#

具体的にどのくらいの株式評価額で税額になるかの例を挙げてみたいと思います。

(売上規模:約30億円)
(従業員数:50人)

⇒株式評価額、約700,000,000円
株式の保有状況にもよりますが、仮に先代経営者が70%株式を保有した状態で相続が発生してしまった場合
700,000,000×70%×50%-42,000,000=203,000,000円
約2億円程度の相続税が発生してしまう計算になります。

したがって、株式対策は経営を永続的に行っていくにあたり極めて重要事項であるため、その対策方法について記載いたします。

自社株式評価額の対策

1.利益圧縮(類似業種比準価額の引き下げ)

1 退職金の支給

役員退職金は、税務上認められる範囲を限度として、会社の損金として計上することが可能であるため、利益の圧縮につながります。退職者の平均月額報酬や勤続年数が長ければ相対的に多くの退職金を支給することが可能です。

長年に渡って会社を経営してきた経営者の方には、当然多くの役員退職金が支払われてしかるべきです。
したがって、現経営者の方々が退職されるタイミングで、大きな費用が計上されるため、その分利益も下がるという仕組みです。

2 オペレーティングリース(JOL)

匿名組合を経由することにより10年程度に渡って、航空機や船舶を所有します。

所有初年度や2年目に大きな減価償却が発生するため利益を圧縮することが可能です。
また、オペレーティングリースのよる利益圧縮は募集条件にもよりますが、他の対策と比べて比較的多くの損金を計上することが可能です。
ただし、このスキームによる損金計上額は年々減少していく仕組みのため、利益圧縮の効果は数年間に限定されることから株式承継時期に注意する必要があります。

2.純資産額圧縮(純資産価額の引き下げ)

1 不動産購入

#

土地・建物を購入した場合、資産額を圧縮することが出来ます。

土地については、路線価という評価方法で評価しますが、一般的に時価の80%程度の評価額になります。
建物については、固定資産税評価額で計算を行いますが、一般的に時価の60%~70%程度の評価になると言われています。
すなわち、現金預金を不動産に転換することで資産額の圧縮につながるという事です。

ただし、課税時期前3年以内に取得した土地及び建物は、実際の取引価額での評価となりますので注意が必要です。

2 保険加入

2019年通達改正前には生命保険の加入による保険料の支払いは全額または半分が経費になったりと高い損金性を出すことが可能でした。改正後にはその損金性が著しく下がったため利益圧縮には有効ではなくなったと言えます。
ただ、生命保険の中には低解約返戻型と呼ばれる保険があり、これは資産額を圧縮する効果があります。自社株式を評価する場合、保険積立金の評価額は解約返戻金相当額で判断しますが、この低解約返戻型は加入後数年は非常にその金額が低く、後に高くなるという性質の保険であるため、その仕組みを利用し、資産額の圧縮を図ることが可能です。

<加入前>

←以下の表は左右にスライドできます→

資産 評価額 負債 評価額
現金預金 400,000 流動負債 100,000
流動資産 100,000 固定負債 200,000
固定資産 100,000 純資産 300,000
合計 600,000 合計 600,000

<加入後>

←以下の表は左右にスライドできます→

資産 評価額 負債 評価額
現金預金 200,000 流動負債 100,000
流動資産 100,000 固定負債 200,000
固定資産 100,000 純資産 160,000
保険積立金 60,000
合計 460,000 合計 460,000

自社株式の移動による対策

1.贈与

1 暦年贈与

暦年贈与とは、年間110万円の非課税枠を使用して毎年株式を贈与していく方法です。
非課税枠内の金額であれば、贈与税の課税対象にはなりませんので、納税をすることなく後継者に少しずつ株式を贈与していくことが可能です。
事業承継までまだ相当の時間的余裕がある場合は有効かと思われます。
なお、暦年贈与で株式移転を行う場合は、贈与契約書・議事録など必要資料の作成・保存が必要となります。

2 相続時精算課税

相続時精算課税制度は60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫への贈与に対して利用することが出来ます。
非課税枠2,500万円まで贈与時に課税を受けることなく贈与を行い、その後相続が発生した時は、贈与時の時価により該当資産も含めすべてが相続税の対象になります。
つまり、相続時精算課税制度を用いたとしても、自社株式が相続財産から外れるわけではありませんが、今後も継続的に株価が上昇するような場合、贈与時の時点により価格を固定できるという点で効果があります。

3 事業承継税制

事業承継税制とは、一定の要件を満たしている会社が適用でき、非上場株式を贈与、相続で取得した場合に、その株式にかかる贈与税、相続税が猶予される制度です。
非上場株式を評価した場合、ご自身が思っている以上に高い株価が算定される場合も多く、それにより、贈与、相続時に支払う税額が膨大になり、株式を売却しないと税金が払えない等の事情が生じ、後継者への事業承継が困難になるケースも少なくありません。
そこで、会社が続く限りは贈与税、相続税を猶予することにより、円滑な事業承継を実行することを目的にこの制度ができました。

2.譲渡

1 資産管理会社へ譲渡

資産管理会社に株式を売却することで、先代オーナーの個人資産を減少させることが可能です。なお、仮に、売却された会社が利益を出し続けた場合、評価額算定時に法人税等相当額を評価額から引くことが出来るため、売却前よりも低くすることが可能です。
また、仮に資産管理会社の100%子会社にした場合、受け取る配当金は全額益金不算入となり、課税がありません。

#

相続発生後でも可能な対策

相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例

1 譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例

個人が株式をその発行会社に譲渡して、発行会社から対価として金銭等の交付を受けた場合、その交付の基因となった株式に対応する資本金等の部分の金額を超える時は配当所得とみなされて所得税が課税されます。この場合、通常配当所得の金額が大きくなることが予想されるので最高55%の税額を納付する可能性があります。
しかし、相続税発生後3年10か月以内に発行会社へ譲渡した場合に限り、配当所得とはみなされず、発行会社から交付を受けた金額の全額が譲渡所得の収入金額とみなされます。 この場合、所得税の税率は20.315%であるため、配当所得の税率とはかなり金額の優遇を受けることになります。

2 相続税額を取得費に加算する特例

①の場合(譲渡対価の全額を譲渡所得の収入金額とする特例を受けた場合)、発行会社に譲渡する際の譲渡所得金額を計算するに当たり、相続で課された相続税額のうち、その株式の相続税評価額に対応する部分の金額を取得費に加算して収入金額から控除することが可能です。

事業承継の際には、自社株式対策が極めて重要になります。万が一全く対策を講じなかった場合は思わぬ税金を課せられるケースがあります。
上記でご紹介した通り、自社株式対策は多岐にわたるため専門家に相談しながら進めていく事が賢明です。
事業承継に関して、お考えの経営者の皆様は一度ご相談ください。

 

このページを見た人はこんなページも見ています

初回無料相談
お気軽にご相談下さい

受付時間 9:00~17:00(土日祝除く)

フリーダイヤル 0120-938-563

Copyright(c) YONEMOTO GOHDOU Tax Corporation. All Rights Reserved.

PAGE TOP