コラム
倒産防止共済に加入して不測の事態に備えておきましょう

倒産防止共済に加入して不測の事態に備えておきましょう

※このコラムは「三井住友カードBiz」2022年3月号に掲載されます。


取引先が突然倒産してしまった、そんなもしもの時に役立つ倒産防止共済をご存じですか?突然の経営難に備えておくこの制度を上手に利用すれば不測の事態に備えつつも節税や資金繰りができます。

今回はこの倒産防止共済がどんな制度なのか説明します。


■倒産防止共済はどんな制度なのか?

中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)とは、突然の取引先の倒産によって資金力に不安のある企業が不測の事態に巻き込まれてしまい連鎖的に倒産に追い込まれることを防ぐことができる共済制度です。

無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。


また、加入するには資格が必要です。

中小企業者または個人事業者が対象で1年以上継続して事業を行い、業種ごとに以下の資本金額、従業員数どちらかの要件を満たす場合に加入することができます。


業種 資本金額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業等 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5千万円以下
100人以下
小売業 5千万円以下
50人以下

医療法人は公益性が高く、利益の分配を禁止しているため加入の対象になりません。

その他、加入頂けない場合もあり、詳しくは下記の中小機構HPから確認できます。

(中小機構HP 経営セーフティ共済 加入資格)


■基本的なポイント

1. 掛金は月額5千円から20万円

倒産防止共済の掛金は月額5千円から20万円までで、その範囲内であれば5千円単位で自由に決められ、途中で掛金額を変更することも可能なので事業の利益の状況に応じて金額を設定できます。積立て総額の上限は800万円です。


2.任意で解約できる

倒産防止共済の解約は、契約者の任意でいつでもできます。掛金をすでに12ヶ月以上納付している場合、納付月数に応じた解約手当金がもらえ、40ヶ月以上納付すれば掛金全額が戻ります。


3. 取引先の倒産後、すぐに資金の借り入れができる

「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(上限8,000万円)」のいずれか少ない方を共済貸付金の上限として、無担保・無保証人で受けることができます。


共済金を借りた場合の返済期間
5,000万未満 5年
5,000万以上6,500万未満 6年
6,500万以上8,000万以下 7年

ただし、共済金を借りると、その10%の額は掛金から差し引かれます。 例えば8,000万円を借りたら、掛金総額の800万円が没収されることになりますので、実質的には借り入れのタイミングで10%の利息を前払いしているということになります。 無担保・無保証人の上、無利子で借り入れを受けることができるのはとても魅力的ですが、しっかり考えた上で利用を検討することが必要です。


■メリット

1. 急に資金を要する場合に一時貸付金が受けられる 取引先の倒産後はもちろんですが、通常の運転資金についても一時貸付金を受けられます。12ヶ月以上掛金を納めていれば利率0.9%で利用でき、臨時の事業資金として、無担保・無保証人で納付月数に応じた解約手当金の95%を上限として借り入れができます。

迅速な運転資金の確保ができますので経営上の安心感にもつながります。


2. 掛金はすべて経費計上できる

確定申告の際に規定の明細書を添付することにより、納付した掛金は損金または必要経費に算入できます。

例えば、掛金の上限20万円を納付すると年間240万円を経費として計上できるため、節税対策として有効です。また、1年以内の前納掛金も払い込んだ期の損金または必要経費の額に算入することも可能です。したがって、前納掛金を決算月に納付することにより単年で480万円を経費として計上することができます。利益が出ており、資金に余裕がある事業年度に掛けて、経営状況の悪い事業年度に解約することである程度のリスク分散が可能となります。


■デメリット

1. 解約による元本割れ

解約すると解約手当金として納付月数に応じた額が払い戻されますが、40ヶ月未満だと元本割れします。

納付月数が12ヶ月以上であれば80%以上が支払われる一方、12ヶ月未満で解約すると0%(掛け捨て)となるため要注意です。40ヶ月以上納付すれば100%返ってきますので、加入の際には長期的な視野を持って判断することが必要です。


2. 解約手当金の課税

倒産防止共済の掛金は経費計上できますが、解約手当金は雑収入として扱われ課税の対象となります。すなわち、掛金の納付は節税となりますが、解約の返戻金を受け取るときに節税分の税金を納めなければなりませんので、実質的には税金の納付時期を繰り延べているだけということになります。

解約のタイミングはよく検討しなければなりません。


■加入するには?

中小機構HPの加入手続きに基づいて行います。

(1) 契約申込書などの必要書類を準備して、必要事項を記入する

(2) 中小機構と業務委託契約を結んでいる団体または金融機関の窓口に提出する

(3) 中小機構からの書類を受け取り、保管しておく。

詳しい手順は中小機構HPでご確認ください。


■まとめ

ご紹介した倒産防止共済についてまとめると、以下のようになります。

(1) 倒産防止共済とは、取引先の倒産による連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための共済制度である

(2) 金額を自由に設定できる掛金は経費計上できるため節税対策として有効であるが解約の返戻金は課税の対象となる

(3) 取引先が倒産していなくても通常の運転資金で一時貸付金を受けられる

(4) 40ヶ月未満で解約すると元本割れする

(5) 貸付金の10%の額が掛金から差し引かれる


倒産防止共済を上手に利用すれば不測の事態に備えつつも節税や資金繰りができます。 しかし、デメリットがあることも理解しておく必要があります。 メリットとデメリットを考慮したうえで加入の是非を検討してみることをお勧めします。 倒産防止掛金についてご不明点等ございましたら米本合同税理士法人までご連絡下さい。


米本合同税理士法人 伊藤 紘人

 

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