コラム
中小企業に朗報!消費税インボイス制度の負担軽減措置

中小企業に朗報!消費税インボイス制度の負担軽減措置

※このコラムは「三井住友カードBiz」2023年4月号に掲載されます。


「令和5年度税制改正大綱」より消費税の適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)について改正案が公表されました。今回は、そちらの改正内容と実務上の注意点などについてご説明いたします。なお、インボイス制度の全体像と主な注意点については、2022年11月に掲載の弊社コラムで説明しておりますのでそちらも併せてご確認ください。


■納税額と事務負担に係る軽減措置
【 I 】小規模事業者に対する納税額に係る軽減措置(2割特例)

対象者 免税事業者(※1)に該当していたが、インボイス登録により課税事業者となった者
適用期間 令和5年10月1日~令和8年9月30日を含む課税期間(※2)
(個人事業者は令和5年10月1日~令和8年12月31日)
措置内容 納税額を売上に係る消費税額の2割とする。

(※1)免税事業者とは基準期間(基本は前々期)の課税売上高が1,000万円以下であることから消費税の納税を免除される事業者のこと。
(※2)課税期間とは基本的には法人の事業年度をいいます。3月決算法人の場合は、4月~翌3月となります。

(1) 消費税額の計算方法について
従来、消費税納税額計算についての原則的な方法は、売上に係る消費税額から仕入等に係る消費税額を控除する方法が取られています。対してこちらの軽減措置を適用すれば、仕入税額を把握する必要がなくなり、売上や収入に関する税率の把握だけで消費税の申告が可能になるため事務負担が大幅に軽減されます。

<計算例 売上1,000万(税抜)、仕入ほか経費600万(税抜)のケース>
 ・原則的な方法による納付額 100万 - 60万 = 40万円
 ・2割特例による納付額 100万 × 20% = 20万円

(2) 軽減措置の適用方法について
この軽減措置は事前申請が不要で、確定申告書にその旨を付記することにより適用を受けることが可能です。


(3) 実務上の注意点について
上記小規模事業者の2割特例は、大抵の場合採用した方が納税額を抑えることが出来ますが、卸売小売等の業種では当該措置とは別の簡易課税制度を選択して納税額を計算した方が得になるケースもあるため、年度の途中でシミュレーションを行い決定することが必要です。また、設備投資額が多額で仕入に係る消費税額が売上に係る消費税額よりも多額となったため、消費税について還付を受けられるケースについても当該特例を選択しない方が有利となります。


【 II 】一定規模以下の事業者に対する事務負担軽減措置

対象者 基準期間課税売上高が1億円以下または特定期間(※1)課税売上高が5,000万以下の事業者
適用期間 令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間
措置内容 税込1万円未満の課税仕入については適格請求書の保存義務を課さず、一定事項を記載した帳簿のみの保存を要件とする。

(※1)特定期間とは、前年または前事業年度開始の日以後6か月の期間。

(1) 現行法令では、「3万円未満の課税仕入」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」は一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められることが規定されていました。これに対してインボイス制度開始後は金額の大小に関わらず適格請求書の受領と保存が必要となるため、事務負担増加が懸念されていました。そこで今回の改正により上記一定規模以下の事業者については少額の取引につき、請求書保存要件が緩和されました。


(2) また、その他以下の取引等の適格請求書保存要件については、改正前より帳簿のみの保存を仕入税額控除の要件としていましたのでご参照ください。
・公共交通機関の料金(税込3万円未満)
・自動販売機、自動サービス機からの商品の購入等(税込3万円未満)
・郵便切手を対価とする郵便サービス
・従業員等に支給する通常必要であると認められる出張旅費、宿泊費、日当
・従業員等に支給する通常必要であると認められる通勤手当


【 III 】少額の適格返還請求書の交付義務免除
インボイス制度では当初、適格請求書発行事業者は、課税事業者に売上値引きや返品を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されていました。しかし、売掛金の決済で得意先からの振込の際に手数料相当額が差し引かれて入金される慣行があり、これを売上値引きとして処理した場合、常に適格返還請求書を交付する必要があることが問題視されていました。
今回の改正では上記を踏まえ、1万円未満の値引きについての適格返還請求書交付義務が無くなりました。なお、売主負担の振込手数料については、売手側で売上値引とする処理と支払手数料とする処理の2つの方法がありますが、今年度の改正により売上値引として処理することで事務負担が軽減されることとなります。


[取引イメージ]
1.売上時
(売掛金) 50,000 (売上) 50,000
2.入金時
(預金) 47,770 (売掛金) 50,000
(売上値引) 330
(※)上記売上値引きについて適格返還請求書の交付義務を免除


■そのほか制度の見直しと手続きの柔軟化
(1) 登録の期日と登録取り消しの期日
改正前は、令和5年10月1日のインボイス制度施行開始日よりインボイス制度の登録を受けるためには、令和5年3月31日までにインボイス制度への登録申請を済ませなければなりませんでした。今回の改正により登録手続きの柔軟化のため、令和5年9月30日まで制度開始前登録申請期間が延長されました。令和5年10月1日以後の登録及び登録取消申請については、課税期間の初日から起算して15日前の日までに登録申請書を提出することが必要となり、従来よりも申請期日が緩和されました。


(2) 補助金制度申請要件の緩和について
・小規模事業者持続化補助金の補助上限額上乗せ
令和3年9月30日から令和5年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者に対して、小規模事業者持続化補助金の補助上限額が一律50万円加算されることとなりました。当該補助金の申請受付開始は令和5年3月10日で、受付締切は令和5年6月1日もしくは令和5年9月7日迄となっています。補助対象経費は多岐にわたるため活用の検討をおすすめします。


■まとめ
以上のように改正によりインボイス制度導入に向けて、納税額・事務負担・手続きとそれぞれの要素に緩和措置が施されました。米本合同税理士法人では制度内容の説明や対応方法などについて、状況に応じたサポートをご提案しております。ご興味のある方は、一度お問い合わせをお願いいたします。


宮本 紘造

 

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