コラム
銀行評価が上がる決算書の表記のチェックポイント

銀行評価が上がる決算書の表記のチェックポイント

※このコラムは「三井住友カードBiz」2024年11月号に掲載されます。


銀行融資における評価は決算書に基づいて決まることが多くあります。決算書の内容ももちろん重要ですが、決算書の表記を工夫することで銀行評価が上がり有利な条件で融資が受けられる可能性が高まります。
今回は銀行評価が上がる決算書表記の工夫をご紹介いたします。


【銀行評価が上がる決算書の表記のチェックポイント】


■役員借入金が短期借入金や長期借入金に含まれていないか

役員借入金は銀行評価において資本の一部とみなされ、負債と評価されません。
他の銀行借入金に含めて短期借入金や長期借入金として処理が行われていると通常の有利子負債と評価されるので、銀行融資の評価にとってマイナスとなります。
また、短期借入金に含めている場合は流動比率の悪化となってしまいます。


■未払金や預り金などの負債科目にワンイヤールールを適用しているか

負債科目内の返済や支払いが一年以内のものは流動負債、一年超のものは固定負債とすることをワンイヤールールといい、一年超のものを流動負債に含めている場合は流動比率の悪化となってしまいます。


■借入金の勘定科目内訳書には銀行名や内訳が記載されているか

融資審査において、融資対象が既に借入を行っている金額や金融機関の情報は各銀行が気にする部分です。
地方銀行のプロパー融資など既に他の金融機関から評価を受けている場合、それだけで他の銀行から見た評価も上がることとなります。


■売上高の勘定科目を細分化する

融資担当者の貸出稟議作成において、売上高の中身を勘定科目で細分化しておくことにより、会社の事業実態の説明がしやすくなります。


■会社へ不動産を賃貸している場合、その内容を地代家賃の勘定科目内訳書に記載しているか

融資審査において、地代家賃の内訳書で確認していることの一つに、会社の事業で使用している不動産がある場合、その所有者が社長となっているかという点です。
融資対象会社の返済能力は、会社の返済能力だけでなく、社長個人で不動産を所有している場合において、その不動産の担保設定の有無、処分価値も合わせて評価されることとなります。
内訳書上に借主の氏名・住所・不動産の所在地を記載していない場合は、融資において加味してもらえない可能性があるので記載を行っているかご確認ください。


■特別損失にすべきものを販売費一般管理費計上していないか

融資審査において返済能力の評価として会社の経常利益を重視します。
役員退職金、商品廃棄損などの一時的な損失を販売費一般管理費に計上してしまうと、経常利益が過小に評価されることとなります。


■圧縮記帳が可能な補助金について積立金方式で圧縮記帳を行っているか

昨今、事業再構築補助金やものづくり補助金など多額の補助金を受給するケースが増えてきています。
補助金に対する課税を繰り延べるため、補助金を使用し固定資産を取得する場合、受給する補助金に対応する金額として税務上認められる金額を課税所得から減額させる処理を行う制度を圧縮記帳といいます。

圧縮記帳は以下のいずれかの方式で行うことができます。
(1) 直接減額方式
決算書上、補助金に対する費用として課税所得減額相当額を計上し、同時に固定資産の取得価額を減額する方法
(2) 積立金方式
受給した補助金相当額を利益剰余金から圧縮積立金として純資産の内部振替を行い、法人税の申告書上で課税所得の減額を行う方法

課税所得の減額の方法が直接減額方式の場合は補助金に対する費用を決算書上、直接計上することに対し、積立金方式の場合は法人税申告書上で行うことで圧縮額が決算書上の利益計算に影響させないため、融資審査においては決算書上の利益や純資産を多く残すことができる積立金方式が有利になります。
特に補助金を使用して建物や土地の取得すること等、圧縮記帳による金額が多額になる場合はその影響が大きくなるため、積立金方式で処理されているかご確認ください。


■特別償却が剰余金処分方式で行われているか

特定の減価償却資産に対して、通常の減価償却費より多額の減価償却費を計上できる制度を特別償却といいます。
この特別償却も上記の圧縮記帳と同様に直接減額方式(決算書上で計上する方法)と剰余金処分方式(法人税申告書上で計上する方法)があり、融資審査においては決算書上の利益に影響させない剰余金処分方式が有利になります。


いかがでしたでしょうか。
決算書の中には銀行融資を意識して作成されていないものも多くあります。
一度ご自身の会社の決算書をご確認いただき、銀行融資を意識した決算書づくりのきっかけになれば嬉しく思います。


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