国税庁が無料で提供する年調ソフトを活用して年末調整業務を効率化しませんか
※このコラムは「三井住友カードBiz」2024年12月号に掲載されます。
平成30年度の税制改正を受けて、令和2年分の年末調整から「年末調整手続の電子化に向けた取組」が始まっており、国税庁が無料で提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」(以下、「年調ソフト」)を使って、年末調整業務の効率化を進められるようになっています。
国税庁Webサイト:年末調整手続の電子化に向けた取組について
手続きの電子化は控除証明書のデータ保存も含めた「完全電子化」、申告書類の作成のみを電子化する「部分電子化」のように、給与の支払者(勤務先)のシステム利用状況に合わせて、取り組みやすい方法で実施できます。
今回は比較的導入しやすい「部分電子化」を中心に説明いたします。
◆年末調整手続きの電子化のメリット
年末調整手続きの電子化は勤務先(給与の支払者)と従業員(給与所得者)の双方にメリットがあります。
勤務先(給与の支払者)のメリット
(1) 関係書類の配布や回収が不要
(2) 控除額や添付書類のチェックが簡単
(3) 会社のシステムへの手入力作業が不要
(4) 書類の保管場所も不要
従業員(給与所得者)のメリット
(1) 手書きでの書類作成が不要
(2) 控除額はソフトが自動計算
(3) テレワーク中の従業員も提出可能
(4) マイナポータル連携を利用すれば、保険料等の証明書をまとめて取得可能
◆年末調整手続きの電子化の大まかな流れ
まず「完全電子化」する場合の大まかな流れについてご説明します。
1.従業員の作業
従業員は保険料等の控除証明書をデータで取得し、これを利用して年末調整に関する申告書を、国税庁が無料で提供する「年調ソフト」を用いてデータで作成します。
2.勤務先の作業
勤務先は従業員から年末調整に関する申告書及び控除証明書等のデータの提供を受け、このデータを利用して年税額を計算します。
「完全電子化」をする場合、従業員は保険料等の控除証明書をデータで取得する必要がありますが、保険会社等への事前手続きやマイナンバーカードを活用したマイナポータル連携など、一定のITスキルが求められるため、全ての従業員から控除証明書をデータで提供を受けるのは難しいと思われます。
具体的な手順については国税庁が従業員向けの手順書を公開していますので、参考に下記リンクからご覧ください。
国税庁Webサイト:年末調整手続の電子化に関するパンフレット「電子化の進め方(従業員編)」
勤務先は従業員から提出を受けたデータを利用することで、会社の給与システムへの手入力作業が不要になりますが、利用している給与システムが国税庁の年調ソフトとの連携に対応している必要がありますので、給与システムの提供元への事前確認が必要です。
以上のことから、いきなり「完全電子化」を始めるのはハードルが高いといえますので、まずは取り組みやすい方法として申告書類の作成のみを電子化する「部分電子化」から始められてはいかがでしょうか。
◆申告書類の作成のみを電子化する「部分電子化」
「部分電子化」の大まかな流れは次の通りです
1.従業員の作業
今まで従業員に紙で配布して、手書きでの作成を依頼していた年末調整に関する申告書を、国税庁が無料で提供する「年調ソフト」を使用して作成してもらい、データで提出を受けます。
従業員が「年調ソフト」を利用することで、勤務先は申告書用紙の事前配布が不要になります。
「年調ソフト」はパソコンだけでなくスマートフォン用も用意されており、手書きとは異なり、控除額の計算、扶養親族等の年齢の判定、控除が受けられるかの判定を自動で行えますので、手間を省けてミスも防止できるメリットがあります。
なお、保険料等の控除証明書をデータで提供を受けることが難しい場合は、控除証明書等は従来通り書面での提出を受けます。
2.勤務先の作業
勤務先は従業員から年末調整に関する申告書データの提供を受け、このデータを利用して年税額を計算します。「年調ソフト」で作成した申告書は控除額が自動計算されますので検算が不要です。
また、給与の支払者が利用している給与システムが国税庁の年調ソフトとの連携に対応していれば、「年調ソフト」で作成したデータを給与システムに取り込むことで控除額の手入力を省略できます。
なお、控除証明書等を書面で受け取った場合は内容のチェックと保管が必要です。
従業員が「年調ソフト」で作成した申告書は印刷して従来通り書面で勤務先に提出することもできます。
利用している給与システムが国税庁の年調ソフトとの連携に対応していない場合は、申告書類の作成のみ「年調ソフト」を利用して、申告書の事前配布や手書きのみ廃止するといった活用方法も可能ですので、給与の支払者のシステム利用状況に合わせて電子化を進めていただければと思います。
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