コラム
金融機関も変化!経営者保証解除で資金調達を有利に

金融機関も変化!経営者保証解除で資金調達を有利に

※このコラムは「三井住友カードBiz」2025年8月号に掲載されます。


経営者保証は、経営者の個人資産を担保とすることで、債務リスクを経営者自身が大きく背負うことになり、積極的な事業展開、資金調達を難しくし、事業承継を妨げる要因となります。
今回は金融庁が進める経営者保証解除の動きについて解説します。


■経営者保証解除が加速している

金融庁は「経営者保証に関するガイドライン」を推進し、金融機関に中小企業の事業性評価を重視するよう求めています。これにより、金融機関の融資姿勢が変化し、事業計画の実現可能性、収益性、キャッシュフロー、成長性などを詳細に評価するようになりました。
このガイドラインは、透明性の高い融資を促進し、経営者保証が必要最低限に留まる環境を整えることを目的としています。事業が順調に進んでいる場合や経営改善計画が実行されている場合、経営者保証の解除や減額が積極的に検討されるようになっています。
また、大手銀行のみならず、地方銀行でも経営者保証に依存しない融資件数割合が増加しています。


■経営者保証に関するガイドラインの内容

「経営者保証に関するガイドライン」は、中小企業の経営者保証を不要とする融資慣行の確立を目指し、2014年2月に策定されました。このガイドラインは、事業者と金融機関の双方が遵守すべき原則と具体的な対応を定めています。
主な内容は以下の通りです。


(1)経営者保証の有無の判断基準
金融機関は、融資判断において事業の将来性や事業計画の実現可能性を重視し、経営者保証に過度に依存しない融資判断を行うべきとされています。以下の条件を満たす場合に保証を不要とする方針を推奨しています。


・法人と経営者の資産、経理の分離
法人の財産と経営者個人の財産が明確に区分され、会計も明確に区分されていること。例えば、法人名義と経営者個人名義の口座を混同しない、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、代表者への貸付等)を、社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備する、法人の費用と個人の費用を区別するといった点が挙げられます。


・財務基盤の強化
法人の資産や収益力で債務の返済が十分可能であると判断される状態であること。具体的には、自己資本比率の向上、安定したキャッシュフローの創出、借入金依存度の低減などが評価されます。


・適切な情報開示
金融機関に対し、適時、適切な財務情報(決算書、試算表、事業計画書など)を提供し、経営状況の透明性を確保していること。


(2)保証契約時の透明性と説明責任
金融機関は、経営者保証を求める場合、契約時に保証の必要性やその内容(保証金額、保証期間、条件など)、経営者が負うリスクについて明確に説明し、経営者の自由な意思に基づいていることを確認する必要があります。
また、保証契約の内容を定期的に通知し、事業者の状況変化に応じて見直しの機会を提供するよう努めることが求められています。


(3)保証債務の履行時(返済不能時)の対応

万一、事業者の経営状況が悪化し、経営者が保証債務を履行しなければならない状況になった場合でも、過度な負担を避けるための配慮が求められます。具体的には、以下の対応を推奨しています。


・保証人の生活を維持するための資産(自宅等)を可能な限り残す

保証人である経営者やその家族の生活の安定を図るため、自宅などの生活基盤となる資産については、可能な限り処分を求めないよう努めるべきとされています。


・早期の事業再生や破産手続きを支援し再起を促す

事業の再生可能性がある場合は、再生支援を積極的に行い、再生が困難な場合でも、破産手続きなど法的な解決方法への円滑な移行を支援し、経営者の早期の再起を促すことが重要とされています。


(4)事業承継時の特例
事業承継は、経営者保証が事業承継の妨げとなるケースが多いことから、ガイドラインでは特に配慮が求められています。事業承継時に後継者が過度な保証負担を負わないよう、既存の保証契約を見直すことが可能となります。
また、承継後の経営者が新たに保証人となる場合も、ガイドラインに基づきその必要性を慎重に判断することが求められ、可能な限り経営者保証を求めない方向で検討されるべきとされています。


■保証解除へ向けた具体的な動き
経営者保証の解除に向けた具体的なアクションプランをまとめます。


【ステップ1:現状の把握と準備】

(1)経営者保証の状況確認
・現在締結している保証契約の詳細を把握。(保証金額、対象融資、契約条件など)
・融資契約書や保証契約書を確認し、どの融資に保証が付いているかを整理。
・金融機関に問い合わせ、ガイドライン適用可能性の確認を行う。


(2)法人と経営者の資産・経理の分離状況の評価
・法人と経営者の資金が混同していないかチェック。(例:経営者への貸付、個人資産の法人利用)
・個人名義の資産(不動産、預金など)が法人融資の担保に含まれていないか確認。
・混同がある場合は、個人と法人の取引を明確化。(例:役員貸付金の返済、個人資産の法人への移転整理)


(3)財務状況の分析
・直近3~5年の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)を確認。
・財務基盤の強さ(純資産、債務返済能力、収益力)を評価。
・債務超過や赤字が続く場合、経営改善計画を策定し、収益力強化を目指す。


(4)情報開示の準備
・金融機関に提出する事業計画書や資金繰表を準備。
・経営戦略や成長計画を明確化し、将来の返済能力をアピールできる資料を作成。
・税理士や公認会計士等に相談し、信頼性の高い資料を準備。


【ステップ2:金融機関との事前協議】

(1)ガイドラインの活用を明示
・金融機関に対し、「経営者保証に関するガイドライン」に基づく保証解除を希望する旨を伝える。
・ガイドラインの要件(資産分離、財務基盤、情報開示)を満たしていることを説明。


(2)代替の信用補完策の提案
保証解除に伴う金融機関のリスクを軽減するため、以下を検討する。
・不動産や売掛債権などの追加担保提供。
・保証料の上乗せを受け入れる。


(3)複数金融機関との相談
・現在の取引金融機関がガイドライン対応に消極的な場合、他の金融機関(地方銀行、信用金庫など)に相談。
・複数の金融機関にアプローチし、条件を比較。


【ステップ3:解除交渉の実行】

(1)正式な保証解除の申出
・金融機関に正式に保証解除を申請。書面で「ガイドラインに基づく解除依頼」を提出。
・必要書類(財務諸表、事業計画書、資産分離の証明書類など)を揃える。


(2)交渉のポイント
・保証解除後の融資継続や新たな融資条件を明確に議論。
・ガイドラインの精神(経営者の再起支援、事業継続支援)を強調し、協力を求める。
・金融機関との面談では、事業の将来性や返済計画を具体的に説明。


【ステップ4:事業承継や廃業時の特別対応】
(1)事業承継時の解除
・事業承継を機に保証解除を申請(ガイドライン特則を活用)。
・後継者が保証を負わないよう、承継計画と連動して交渉。


(2)廃業時の債務整理
・廃業に伴う保証債務の整理では、ガイドライン改定(2023年11月)を活用し、破産回避や生活維持資産の保全を目指す。


【ステップ5:継続的なフォローアップ】

(1)解除後の関係維持
・保証解除後も金融機関との良好な関係を維持するため、定期的な情報開示を継続。
・経営状況の変化(業績悪化など)があれば早めに相談。


(2)新たな融資の検討
・保証不要の融資制度(例:信用保証協会の新制度)を活用し、事業拡大や設備投資を検討。


(3)モニタリングと改善
・財務基盤や情報開示の質を継続的に改善し、将来の保証不要融資の可能性を高める。


【注意点】
(ガイドラインの限界)
ガイドラインは自主的ルールであり、金融機関の対応は一律ではない。粘り強い交渉が必要。
(準備の重要性)
資産分離や財務強化には時間がかかるため、早期に取り組みを開始。
(コストの考慮)
保証解除に伴う保証料の上乗せや新たな担保提供によるコストが発生する可能性がある。
(専門家の活用)
交渉の複雑さや金融機関との力関係を考慮し、弁護士等の専門家の支援を受けることが効果的。


経営者保証の解除は、中小企業の成長を加速させるための重要な一歩です。 金融庁のガイドラインを積極的に活用することで、より自由度の高い経営を実現し、さらなる事業の発展を目指しましょう。


米本合同税理士法人では顧問先様の資金繰の支援も積極的に行っております。これら以外の御相談でも対応可能ですので、一度面談だけでも行なってみたい方は初回面談無料ですのでご遠慮なくお申し付け下さい。


 

お気軽にご相談ください。
無料相談のお申込みも受け付けております。

お電話のお問い合わせはこちら

フリーダイヤル 0120-938-563

メールでのお問い合わせはこちら

お問い合わせはこちら

Copyright(c) YONEMOTO GOHDOU Tax Corporation. All Rights Reserved.

PAGE TOP