103万円の壁の引き上げ!令和7年度税制改正について
※このコラムは「三井住友カードBiz」2025年9月号に掲載されます。
令和7年度税制改正により、所得税の「基礎控除」や「給与所得控除」に関する見直しや「特定親族特別控除」の新設等が行われました。
この改正により、いわゆる「103万円の壁」が「160万円の壁」に引き上げられました。
【1】基礎控除の見直し
(1) 合計所得金額に応じて、次のとおり基礎控除額が改正されました。
合計所得金額 (収入が給与だけの場合の収入金額(※3)) |
基礎控除額 | ||
改正後(※1) | 改正前 | ||
令和7・8年分 | 令和9年分以後 | ||
132万円以下 (200万3,999円以下) |
95万円(※2) | 48万円 | |
132万円超 336万円以下 (200万3,999円超 475万1,999円以下) |
88万円(※2) | 58万円 | |
336万円超 489万円以下 (475万1,999円超 665万5,556円以下) |
68万円(※2) | ||
489万円超 655万円以下 (665万5,556円超 850万円以下) |
63万円(※2) | ||
655万円超 2,350万円以下 (850万超 2,545万円以下) |
58万円(※2) |
(※1) 改正後の所得税法第86条の規定による基礎控除額58万円に、改正後の租税特別措置法第41条の16の2の規定による加算額を加算した金額となります。
(※2) 58万円にそれぞれ37万円、30万円、10万円、5万円を加算した金額となります。なお、この加算は居住者についてのみ適用があります。
(※3) 特定支出控除や所得金額調整額の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
(※4) 合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません。
(2)基礎控除額の改正に伴い、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」が改正されました。
なお、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」の税額は、基礎控除額58万円の引き上げに基づいた金額となっており、創設された租税特別措置法第41条の16の2(令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例)の規定(37万円、30万円、10万円又は5万円を加算する特例)は織り込まれていません。
これらの特例は、年末調整又は確定申告の際に適用を受けることになります。
(3)基礎控除額の改定に伴い、令和8年分以後の公的年金等に係る源泉徴収税額の計算における控除額が改正されました。
「控除額 =(基礎的控除額+人的控除額-調整控除額※)×月数」
※特定の種類の公的年金等については、「調整控除額」として一定額が控除されます。
【基礎的控除額】
受給者の年齢 | その年中に支払を受けるべき公的年金等の額 | 基礎的控除額 | |
---|---|---|---|
令和8年分 | 令和9年分以後 | ||
65歳以上 | 242万円以下 (2階部分のみの場合には163万円以下) |
公的年金等の月割額×25% +105,000円 (175,000円未満となる場合には、175,000円) |
|
242万円超 (2階部分のみの場合には163万円超) |
公的年金等の月割額 ×25% +100,000円 (165,000円未満となる場合には、165,000円) |
公的年金等の月割額 ×25% +750,000円 (140,000円未満となる場合には、140,000円) |
|
65歳未満 | 213万円以下 | 公的年金等の月割額×25% +105,000円 (130,000円未満となる場合には、130,000円) |
|
213万円超 | 公的年金等の月割額 ×25% +100,000円 (125,000円未満となる場合には、125,000円) |
公的年金等の月割額 ×25% +750,000円 (100,000円未満となる場合には、100,000円) |
【人的控除額】
源泉控除対象親族 | 人的控除額 |
---|---|
一般の控除対象親族 | 1人につき32,500円 |
老人扶養親族 | 1人につき40,000円 |
特定扶養親族 | 1人につき52,500円 |
非定親族(新規) | 1人につき52,500円 |
※源泉控除対象親族となる特定親族は、合計所得金額85万円以下の人となります。
(国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」参照)
【2】給与所得控除の見直し
(1)給与所得控除について55万円の最低保障額が65万円に引き上げられました。
給与の収入金額 | 給与所得控除額 | |
---|---|---|
改正後 | 改正前 | |
162万5,000円以下 | 65万円 | 55万円 |
162万5,000円超 180万円以下 | 収入金額×40%−10万円 | |
180万円超 190万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
※給与の収入金額190万円超の場合の給与所得控除額に改正はありません。
(国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」参照)
(2)給与所得控除の改正に伴い、令和7年分以後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」及び令和8年分以後の「源泉徴収税額表」が改正されました。
【3】特定親族特別控除の新設
(1)居住者が特定親族を有する場合には、その居住者の総所得金額等から、その特定親族1人につき、その特定親族の合計所得金額に応じて最高63万円を控除する特定親族特別控除が創設されました。
特定親族の合計所得金額 (収入が給与だけの場合の収入金額(※)) |
特定親族特別控除額 |
---|---|
58万円超 85万円以下 (123万円超 150万円以下) |
63万円 |
85万円超 90万円以下 (150万円超 155万円以下) |
61万円 |
90万円超 95万円以下 (155万円超 160万円以下) |
51万円 |
95万円超 100万円以下 (160万円超 165万円以下) |
41万円 |
100万円超 105万円以下 (165万円超 170万円以下) |
31万円 |
105万円超 110万円以下 (170万円超 175万円以下) |
21万円 |
110万円超 115万円以下 (175万円超 180万円以下) |
11万円 |
115万円超 120万円以下 (180万円超 185万円以下) |
6万円 |
120万円超 123万円以下 (185万円超 188万円以下) |
3万円 |
※特定支出控除の適用がある場合には、表の金額とは異なります。
なお、年末調整において特定親族特別控除の適用を受けようとする人は、給与の支払者に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。
※「特定親族」とは、居住者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者、青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます。)で合計所得金額が58万円超123万円以下の人をいいます。
なお、親族には児童福祉法の規定により養育を委託された、いわゆる里子を含みます。
(2)令和8年1月以後に支払うべき給与及び公的年金等について、それぞれ次の場合に、特定親族特別控除が各月(日)の源泉徴収の際に適用されることとされました。
・給与:親族の合計所得金額が58万円超100万円以下である場合
・公的年金等:親族の合計所得金額が58万円超85万円以下である場合
【4】扶養親族等の所得要件の改正
上記【1】(1)の基礎控除の改正に伴い、次のとおり、扶養控除等の対象となる扶養親族等の所得要件が改正されました。
扶養控除等の対象となる扶養親族等 | 所得要件 | |
---|---|---|
改正後 | 改正前 | |
扶養親族及び同一生計配偶者 | 58万円 | 48万円 |
ひとり親の生計を一にする子 | 58万円 | 48万円 |
勤労学生 | 85万円 | 75万円 |
また、上記【2】(1)の給与所得控除の改正に伴い、家内労働者等※の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額が65万円(改正前:55万円)に引き上げられました。
※家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人を言います。
この改正により、令和7年分以後の年末調整や、令和8年分以後の源泉徴収について、注意しなければならない事項も出てきます。
令和7年分以後の年末調整の際に不備がないよう、従業員の方にもしっかりと内容をお伝えし、年末調整作業を進めていくことが重要かと思います。
【1】令和7年分の年末調整の留意事項
(1)従業員の方に、改正により新たに扶養控除等の対象となった親族がいないかの確認
(2)特定親族特別控除の適用を受けようとする従業員の方から、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出を受ける
(3)改正後の基礎控除額や給与所得控除等に基づいて、年末調整の計算を行う
【2】令和8年分以後の給与の源泉徴収事務の留意事項
(1)従業員の方から提出を受ける扶養控除等申告書に、源泉控除対象親族の記載が正しく行われているか確認
(2)新たな源泉徴収税額表に基づき、各月(日)の源泉徴収を行う。
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