経理の属人化を防ぐ!事業承継で見直したい経理体制
※このコラムは「三井住友カードBiz」2026年11月号に掲載されます。
会社を支えてくれるベテラン経理担当者は頼もしい存在ですが、業務が「その人しか分からない属人化」状態だとリスクがあります。また、長年の功労者だからこそ、後継者からは口出ししづらく、ブラックボックス化することが多々あります。今回は、事業承継を機に会社が把握しておきたい経理体制の見直しのポイントについて解説いたします。
【1】事業承継を機に経理体制も見直すべき理由
● 属人化によるリスク
経理業務が一人の担当者に集中していると、休業や退職の際に支払いや給与計算、請求などが滞り、資金繰りや取引先との関係に影響するおそれがあります。また、資料の整理が不十分だと、処理の遅れや誤りが生じ、月次決算や適正な申告にも支障が出かねません。 普段は問題なく処理されていても、その手順や判断の理由を担当者しか知らなければ、会社としてのリスク管理ができているとはいえません。また、機密性の高い情報を扱う経理では、情報を共有する範囲を定めつつ、特定の人だけに業務の知識が偏らないようにしておく必要があります。
● 事業承継は、経理体制を見直す機会
事業承継期は、先代から続く経理体制を見直す機会です。後継者にとっては、決算書で会社の財務状況を確認することに加え、その数字がどのような業務を経て作られているのか、日々のお金の動きがどう管理されているのかを理解する機会でもあります。 たとえば、売上の金額だけでなく、請求や入金確認の流れまで把握していれば、入金の遅れが資金繰りに及ぼす影響も捉えやすくなります。会社の数字と実際の業務を併せて知ることで、後継者は経理担当者に何を確認し、どのような報告を求めればよいか判断できます。
【2】会社が確認しておきたい5つの事項
経営者が細かな処理方法まで覚える必要はありませんが、次の5点は把握しておきたいところです。
● 業務の内容と期限:
毎月・毎年、どの業務をいつまでに行っているかを一覧にしておけば、処理の漏れや遅れに早く気づけるほか、繁忙期の人員体制や不在時の対応も前もって考えられます。
● 資料の集め方と保管場所:
どの資料を誰から集め、どこに保管しているかを確認しておきましょう。担当者しか保管場所を知らない資料があると、有事の際に必要な書類を探せず、対応が遅れるおそれがあります。
● 不在時の代行者と、日頃の確認・承認者:
不在時に代わりに処理する人と、日頃から内容を確認・承認する人を、それぞれ決めておきましょう。代わりの人が決まっていなければ不在時に業務が滞るおそれがあります。また、確認・承認する人がいなければ、一人の判断だけで処理が終わり、誤りを見過ごすおそれがあります。
● システムの使い方と運用手順:
売上・仕入の管理システムやネットバンキングの使い方、承認手順を整理しておきます。操作方法を知っている人が一人だけだと、担当者の不在や変更の際に、操作方法が分からず、処理が滞るおそれがあります。
● 担当変更時の引継ぎ方法:
誰に何を引き継ぐかを決め、作業手順に加えて判断の理由も書き残しておきます。理由まで残しておけば、後任者が処理の根拠を理解でき、一から調べたり、その都度前任者に確認したりする負担を減らせます。
これらを確認すると、担当者しか判断できない業務や、代わりに対応する人が決まっていない業務が見えてきます。現在の担当者に確認できるうちに手順や役割を整理しておけば、急な不在への備えにも、日頃の業務分担にも役立ちます。
【3】顧問税理士と日頃から業務を点検する
顧問税理士と経理業務を点検すると、日々の処理が決算や申告にどう関わっているかを確認できます。社内で続けてきた作業についても、その目的や必要性を改めて整理する機会になります。
経理担当者に退職や異動の予定がなくても、経営者・経理担当者・顧問税理士で業務を洗い出す機会を設けると、経営者がこれまで把握していなかった、会社として管理すべき業務が見えてきます。未入金の取引先への確認や、請求漏れを防ぐための照合などは、帳簿の作成だけに目を向けていると見落とされがちです。
それぞれの業務について、「何のために行っているのか」「行わなければ、どのような影響があるのか」まで確認し、残すべき確認作業と、簡略化できる作業を整理します。必要な確認は残しながら、重複した入力や手間のかかる資料収集を見直せば、一人に偏っていた負担も減らせます。
【4】クラウド会計やAI・ITで負担を減らし、数字を早く把握する
業務を整理した後は、クラウド会計やAI・ITを活用した効率化を検討します。転記や集計、資料作成の手間を減らせれば、担当者は内容の確認や、未入金・請求漏れ等の他の重要な業務への対応に時間を使えるようになります。
| 活用例 | 期待できる効果 |
| 銀行・売上・仕入・給与・経費精算などのデータを会計ソフトと連携 | 仕訳などの入力作業を省力化し、日々の処理を早める |
| Googleドライブ等で資料やデータを共有 | 必要な資料を関係者が確認でき、受け渡しや所在確認の手間を減らす |
| 業務マニュアルを参照して質問に答える、社内向けAIチャットボットを作成 | 担当者以外でも必要な手順を調べられ、担当者への問い合わせや引継ぎ時の説明負担を減らす |
日々の入力・確認が早まれば、月次の業績や資金繰りも早い段階で把握できます。後継者にとっても、過去の数字を後から聞くだけでなく、足元の状況を見ながら経営判断を行える点がメリットです。
また、作業の手間や難易度を下げることは、引き継ぎの負担を減らすことにもつながります。経験の長い担当者に任せていた仕事のうち、他の人でも対応できる部分が増えれば、新しい担当者への説明や教育もしやすくなります。導入する際は、費用と削減できる作業を比較し、自動化後の確認担当や情報の取扱いも決めておきましょう。
【5】担当者と一緒に少しずつ進める
すべてを一度に見直そうとすると、担当者の負担が増してしまいます。まずは支払いや給与計算など、期限が厳しく、不在時の影響が大きい業務から着手します。
業務の整理には、担当者が積み重ねてきた経験が欠かせません。聞き取りや文書化を経営者側でも分担し、整理のための時間を確保することで、担当者に負担が集中するのを避けられます。事業承継を控えている場合は、先代と担当者に確認できるうちに、後継者を交えて進めておきましょう。
● 経理体制の見直しをご検討の方へ
事業承継を機に経理体制を見直すことで、後継者が会社の財務やお金の流れを理解し、担当者だけが知っていた業務を会社として把握できます。日々の負担を減らしながら、不在時にも対応でき、次の担当者へ引き継げる体制を整えていきましょう。
米本合同税理士法人では、経理業務の洗い出しや、事業承継に向けた経理体制の見直し、クラウド会計・AIによる業務効率化についての支援も積極的に行っております。初回相談は無料ですのでお気軽にお申し付けください。
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