コラム
導入しやすくなったスキャナ保存制度を利用して経理の生産性を向上

導入しやすくなったスキャナ保存制度を利用して経理の生産性を向上

※このコラムは「三井住友カードBiz」2022年7月号に掲載されます。


令和4年1月から施行された改正電子帳簿保存法は、スキャナ保存制度の要件を大幅に緩和し、企業のペーパーレス化を後押ししています。この機会に書類のペーパーレス化を始めて、経理の生産性向上やテレワークへの対応を実現してはいかがでしょうか。


改正電子帳簿保存法について詳しくお知りになりたい方は、弊社コラム「令和3年度税制改正による電子帳簿保存法の概要」をご覧ください。


■スキャナ保存は部分的に導入できる
スキャナ保存の導入はすべての書類を対象にする必要はなく、一部は従来通り紙で保存し、一部はスキャナ保存でペーパーレス化するといった方法も可能です。例えば請求書は紙で保存するが、領収書だけペーパーレス化するといった対応が可能です。書類の種類ごとに行うことができますので、負担のかからない範囲で部分的に開始できます。
費用についても、現在ご利用中の会計システムがスキャナ保存制度に対応している製品であれば、追加負担なく開始できることもあります。


■開始にあたり特別な手続きは必要ない
改正により税務署長による事前承認制度が廃止されました。
スキャナ保存制度に対応した設備(ソフトウェアや機器)および運用ルールを整えれば、いつでも開始できます。


■少ない経理担当者でもできる
改正前まではデータ改ざんなどの不正を防止する目的で、適正事務処理要件が定められていました。
複数の担当者での相互チェックや、定期的に不備がないか確認が必要でしたが、現在は廃止されており、書類のスキャン後に書面とデータが同等であると確認できれば、書類をすぐに破棄できますので、経理担当者が一人の場合でもデータ化や書類の破棄ができるようになりました。


■スキャナはスマートフォンも使用できる
スキャナ保存は、書類を読み取り画像データとして保存する機器(スキャナ)が必要です。
スキャナは、スキャナ専用機や複合機だけでなく、スマートフォンのカメラやデジタルカメラも使用できますので手軽に始めることができます。
<補足>
スキャナ保存する画像は、判読性を確保するために一定水準の解像度(200dpi以上)及びカラー画像による読み取りが必要です。 市販されている一般的なスキャナやカメラで撮影した画像であれば、水準を下回ることはまずありませんが、スマートフォンで撮影した画像については、メッセージングアプリ(LINEなど)を使って転送・保存すると、自動的に画像サイズが変更されて画質が下がる場合があります。
スマートフォンを使用する場合は、ソフトウェアメーカーやクラウドサービスが提供する専用のアプリを使用するか、サービス提供元が指定する操作手順を守っていただければと思います。
ソフトウェアやクラウドサービスによっては、水準を満たしていない画像を保存しようとすると警告を表示してくれるものもあります。


■スキャナ保存制度の要件に対応したソフトウェアやクラウドサービス
スキャナ保存は要件を満たすソフトウェアやクラウドサービスの利用が必要です。公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が、市販のソフトウェアやクラウドサービスが電子帳簿保存法の要件を満たしているかをチェックし、法的要件を満たしていると判断したものを認証しています。新たに導入する場合は認証された製品をご利用いただくのが確実ですので、社団法人日本文書情報マネジメント協会のWebサイトに掲載されている製品一覧を参考にしてください。
電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証製品一覧
https://www.jiima.or.jp/certification/denchouhou/software_list/


なお、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証製品一覧に掲載されていない製品でも、スキャナ保存制度に対応するシステムは多数あります(freeeや弥生会計など) 導入を検討しているシステムや、ご利用中のシステムがスキャナ保存制度に対応しているかについては、各社にご確認をいただければと思います。


■制度を利用する上での注意点
1. 保存する期限
スキャナ保存は書類の作成または受領後、速やか(おおむね7営業日以内)に行う必要がありますが、事務処理規程(国税関係書類の作成又は受領から入力までの各事務の処理に関する規程)を整備することで、一般的な業務処理サイクルに合わせて期限を最長2か月と7営業日以内に伸ばすことができます。7営業日以内に適切な処理方法で保存できるのであれば、事務処理規定は不要ですが、対象文書などを定めた「スキャナによる電子化保存規程」は必要です。どちらの規定も国税庁ホームページでサンプルが公開されています。 自社に合わせて必要な項目を書き換えるだけの簡単なものになっていますので参考にしてください。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

2.タイムスタンプの付与
タイムスタンプは電子データの存在を日時によって証明する技術をいいます。 改ざん防止(真実性の確保)の観点から、スキャナで読み取ったデータにはタイムスタンプを付与する必要があります。
なお、データの保存に訂正や削除の事実やその内容を確認できるようなクラウドサービスなどのシステムを利用する場合は、システムに保存することが改ざん防止の役割を果たしますので、タイムスタンプの付与が不要になります。
ご利用するシステムに合わせて対応してください。

2. 検索機能の確保
保存したデータは次の要件によって検索できるようにしておく必要があります。
(1)取引年月日などの日付、取引金額、取引先の3つを検索の条件として設定できること
(2)日付と金額を範囲指定して検索できること
(3)二つ以上の記録項目を組み合わせて検索できること
税務調査の際に、税務職員による質問検査権に基づくデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、(2)と(3)の機能は不要です。
検索機能の確保については、JIIMA認証を取得している、またはスキャナ保存制度対応を明記しているソフトウェアやクラウドサービスを利用する場合は、システムで対応済みと考えられます。

3.帳簿との相互関連性
スキャナ保存したデータと帳簿の双方に共通の伝票番号をつけておき、相互にその関連性を確認することができるようにしておくことが必要です。
こちらもJIIMA認証を取得している、またはスキャナ保存制度対応を明記しているソフトウェアやクラウドサービスを利用する場合は、システムで対応済みと考えられます。

4.操作説明書など関連書類等の備付け、見読可能装置の備付け
操作説明書の備え付けや(紙の説明書がない場合はオンラインヘルプなどの電子媒体でも可)、いつでも保存したデータを確認できるようにしておくことが求められます。


■不正があった場合の罰則
税務署への事前申請、適正事務処理要件の廃止などにより、導入のハードルが下がりましたが、代わりに不正を行った場合のペナルティが重くなりました。
データの改ざん等により不正処理を行った場合は、通常課される重加算税の額は10%加算した額になります。


以上のように、改正により要件が大幅に緩和され、スキャナ保存を導入しやすくなりました。
スキャナ保存制度への対応を明記しているソフトウェアやクラウドサービスを利用する場合は、メーカーにより操作マニュアルや解説などの整備も進んでおり導入がしやすくなっています。
現在ご利用中の会計システムがスキャナ保存制度に対応している場合は、追加費用の負担なく開始できることもありますので、ご興味のあるかたは税理士に相談されてみてはいかがでしょうか。


米本合同税理士法人では、クラウド会計ソフトの導入サポート、スキャナ保存制度への対応サポートについてもサービス提供を行っております。 導入についてお悩みの方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。


江城 周一

 

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