コラム
その決算対策は本当に大丈夫!?節税の種類をマスターして御社に合った決算対策をしよう

その決算対策は本当に大丈夫!?節税の種類をマスターして御社に合った決算対策をしよう

※このコラムは「三井住友カードBiz」2023年3月号に掲載されます。


今期は円安の影響もあり、輸出企業など利益が大幅に増加している会社については決算対策を検討しているところも多くあると思います。ただし、決算対策を安易に行うとキャッシュを損なうこともあるため注意も必要です。そこで今回は決算対策について節税の種類と決算対策の落とし穴について解説いたします。


■ 決算対策とは?
決算対策とは、決算直前において利益が大幅に出ており、納税額が多額になると見込まれる場合、当面の納税額を抑えるために行われる節税のことを言います。


■ 節税の種類
節税には次の4つの種類があります。
(1) 支出があり、税額を減らす節税
(2) 支出がなく、税額を減らす節税
(3) 支出があり、納税を遅らせる節税
(4) 支出がなく、納税を遅らせる節税
決算対策としてはどれも有効ではありますが、特に(1) (3) はキャッシュアウトを伴いますので実行する場合は慎重に検討する必要があります。


■ 巷で言われている節税はどの種類に該当するのか?

昨今はネットやSNSなど様々な媒体から節税の情報を得ることが出来ます。その中でも決算直前でも実行可能な対策については人気があり、そのニーズを満たす節税商品も存在しています。
ただし、決算直前でも実行可能な対策の多くは上記の(1) (3) に該当するものが多く、納税額を減らす(遅らせる)ことは出来てもそれ以上にキャッシュアウトしていることが多いです。
例えば有名な節税方法の一つとして短期前払費用というものがあります。短期前払費用とは、家賃や保険料など毎月同等のサービスを受けている場合に、支払いを月払いから年払いに変更することで支払額を経費計上する方法です。仮に毎月の家賃が100万円で決算直前に年払いに変更して1200万円を支払うことでその期については経費を多く計上することが可能です。しかし、節税額が支出額を超えることはないため、結果としてキャッシュが減少してしまいます。本来はキャッシュを多く残すことが節税の目的にも関わらず、「お金が減ったのでその分節税になりましたね・・・」という本末転倒な結果になるケースも多いです。なので決算対策を検討する場合はその対策が上記(1) ~(4) のどの種類に該当するのかを見極める必要があります。


■ 節税対策の分類
では、各節税対策について上記(1) 〜(4) に分類した上で簡単に解説いたします。


(1) 支出があり、税額を減らす節税
・決算賞与
夏・冬とは別に決算期に賞与を支給する方法です。決算日後に支給する場合は一定の要件もあります。基本的には(1) に該当します。

・非常勤役員への役員報酬の支給
親族などを非常勤役員として登用し役員報酬を支給する方法です(役員報酬額については限度額があるため要注意です。)。これも(1) に該当しますが、支出先が親族のため(2) と考えることもできます。


(2) 支出がなく、税額を減らす節税
・所得拡大促進税制
前年と比較して給与総額が1.5%増加した場合に適用できる税額控除です。最低賃金などの増加の影響で人件費が自然増している場合は(2) に該当しますが、例えば自然増が1.4%で適用を受けるために賞与などを0.1%分増額させる場合は(1) の要素もあるかも知れません。

・貸倒損失(形式基準)
貸倒損失は通常取引先の倒産、会社更生法の適用などにより売掛金等の残高を経費化するものですが、売掛債権に限りその取引先と1年以上取引・入金が無い場合等一定の場合に形式的に貸倒損失が計上出来るものです。資金の流出を伴う節税ではないため(2) に該当します。


(3) 支出があり、納税を遅らせる節税
・短期前払費用
上記で解説した通り、家賃などの費用を年払いにして経費計上する方法です。基本的には(3) に該当しますが、半永久的に賃借・契約するものであれば(1) に該当する、という考え方も出来るかもしれません。

・倒産防止掛金
取引先が倒産した場合に掛金の10倍までの借入を行うことができるものです。掛金については全額経費算入可能、月額20万円・総額800万円までが限度です。解約をすれば返戻金がありますが、この返戻金は全額課税されるので、(3) に該当します。なお医療法人は加入不可です。

・オペレーティングリース
航空機等のリース物件の所有権の一部を匿名組合を通じて購入します。短期間で大幅な節税が可能ですが、航空機等は最終売却され、売却益として課税されるため(3) に該当します。

・経営力向上計画による特別償却
一定の要件を満たした設備投資について即時償却(投資額が全額経費に入る)が行える制度です。基本的に設備投資前に経営力向上計画の認定を受ける必要があります。即時償却は設備投資年度に多額の経費算入が可能ですがあくまで来期以降の減価償却費の先取りですので基本的には(3) に該当します。ただ元々設備投資を計画していた場合は(4) と考えることもできます。また特別控除(設備投資額の10%を税金から控除)の場合は(1) 又は(2) になります。


(4) 支出がなく、納税を遅らせる節税
・固定資産税の未払計上
固定資産税は年4回(例:6月・9月・12月・2月(自治体により異なる))支払いますが、納付義務自体は納税通知書が送られてくる4・5月頃に確定するため未払計上が可能です。支出を伴わず経理処理のみで実行可能なため(4) に該当します。

・経費の帳端計上
経費については通常各月初から月末の1ヶ月分をまとめた請求書が届き買掛未払計上を行いますが例えば20日締めの仕入先がある場合21〜30日についても買掛未払計上が可能です。これも経理処理のみですので(4) に該当します。

如何でしょうか?将来のキャッシュも考えると一番良いのは(2) 支出がなく、税額を減らす節税です。多少キャッシュアウトもしていますが最終的には返ってくるのでキャッシュは増えます。

反対に注意が必要なのが(1) (3) 、特に(3) です。(3) については納税を将来に繰り延べているだけですのでそのツケが将来回ってきます。そしてそのツケを払うためにまた新たな(3) の節税を行う・・・と無限ループのようになってしまっている会社も多くあります。

また節税策1つ取っても状況や目的によって(1) ~(4) の数字が変動することがあります。特に元々設備投資や給与の増額を予定していた場合は(新たな)支出を伴わない節税として(2) (4) に該当すると考えます。なので御社の状況に応じて(1) ~(4) のいずれに該当するのかを判断する必要があります。


■ (1) (3) でも有効なケース
上記では(1) (3) の節税策を実行する場合には注意が必要と述べましたが(1) (3) の節税策でも有効なケースもありますので代表的なものを紹介いたします。


・赤字の関係会社への短期前払費用の支払い
短期前払費用について関係会社への家賃を年払いとして1200万円支払う場合、支払った会社は支払額が経費になりますが受け取った側は当然に課税されます。ただし受け取った会社にそれ以上の欠損がある場合にはとりあえずは税金が発生しませんのでグループ全体のキャッシュは増えることとなります。欠損金が期限切れ直前の場合は得に有効な方法となります。


・自社株対策
法人税だけ見ればキャッシュアウトしている節税策でも自社株の相続税評価を下げて株式を次世代に贈与する場合などは有効な節税手法になり得ます。なお実行する場合には相続税・贈与税も踏まえた詳細なシミュレーションを行う必要がありますので難易度は上がります。


・そもそも投資として成り立つ
(3) で紹介したオペレーティングリースは投資商品としての側面も持ち合わせています。こういった商品は繰り延べた税金が最終的に課税されますが、そもそも投資としてキャッシュが増えることを見越すのであれば(節税はある意味おまけ程度に考える)最終的に課税されたとしてもキャッシュはプラスですので手法としては有効と考えられます。


■ 会社にとっては節税<キャッシュ
会社にとってのキャッシュは身体にとっての血液に例えられることが多く(血液の流れもお金の流れも止まったら一大事です)、会社にとっては必要不可欠なものです。節税することが目的となってしまいキャッシュを残すことを疎かにしないように注意が必要です。米本合同税理士法人では御社の状況に合った決算対策を提案・実行することにより御社のキャッシュをより多く残すことが可能です。決算対策についてお困りの方や今まで決算対策をされたことがない方は是非ご相談下さい。


税理士 大川 智弘

 

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