コラム
最低賃金の引き上げに伴って起こりうる企業への影響や今後とるべき対策とは?

最低賃金の引き上げに伴って起こりうる企業への影響や今後とるべき対策とは?

※このコラムは「三井住友カードBiz」2023年10月号に掲載されます。


今年度の最低賃金について全国平均が初めて1,000円を超えました。物価上昇が続く中での賃上げは嬉しい半面、中小企業が受ける影響も問題視されます。
今回は最低賃金の引き上げによって起こりうる影響に触れつつ、今後とるべき対策についてもご紹介します。


■最低賃金の確認方法

最低賃金の対象となるのは、労働者に対して毎月支払われる基本的な賃金です。
基本的な賃金とは、毎月支払われる基本給の他に職務手当、役職手当、住宅手当が含まれます。


具体的には、次の賃金が最低賃金の対象から除かれます。
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2) 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金、深夜割増賃金など)
(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当


時給制の場合は、地域別最低賃金の金額が時間給を上回っていれば問題ありません。
日給制と月給制の場合は、賃金額を時間当たりの金額に換算し、時間額と比較します。
また、最低賃金は出来高払いや試用期間中であっても適用されます。


■最低賃金引き上げが与える企業への影響

企業の人事担当が最低限抑えておくべき、最低賃金引き上げが与える企業への影響を紹介します。


・人件費が増える
最低賃金の引き上げは企業が負担する人件費が増大します。
例えば、1日の所定労働時間が8時間、年間休日が105日の会社の場合、月平均の所定労働時間は173時間となります。


計算根拠 8時間 × (365日-105日) ÷ 12ヶ月 = 173時間


最低賃金の引き上げ額が全国平均で43円のため、仮に時給が40円引き上げられると、会社の負担が月換算で6,500円以上も引き上げられることになります。
現時点で従業員の時給を最低賃金ギリギリで設定している企業は、従業員数や雇用時間の見直しが必要となる可能性があります。そして場合によっては求人内容を変更する必要もあります。


・新たな人材の獲得が厳しくなる
人件費の負担が大きくなれば採用コストを割くことが難しくなります。 アルバイトやパートを多く抱える企業にとってはかなりの影響が及ぶことが考えられます。 また、時給の設定を高くしても、他社も同様に賃上げを行っているため時給による差別化が難しくなり採用活動は苦戦を強いられることでしょう。


・正規社員のモチベーション低下
最低賃金の引き上げによって、非正規社員と正規社員の賃金があまり変わらない状況になれば、正規社員のモチベーション低下が懸念されます。結果として賃金の高い他社に流れるなど離職につながる恐れも出てきます。
社員間の不平等感を生み出さないよう既存社員への気配りも必要となってきます。


■最低賃金引き上げへの対策

人件費の負担が大きくなるとその分企業の利益が減少することが考えられます。
業績が上向かない状態で賃上げを迫られるのは企業にとって苦しいと思います。 今後、賃上げに対応できる環境を整えることがこれまで以上に重要な課題となるかもしれません。


・従業員のスキルアップを図る
賃上げが行われると、従業員のモチベーションが上がるため企業への貢献度も向上するはずです。
これを機に、従業員のスキルアップを図り、増加した人件費分の業績を向上させることができるかもしれません。
スキルアップとして具体的には社内研修の開催、外部セミナーの受講、資格獲得への支援などが考えられます。


・賃金を適正に分配する
有資格者や成績上位者への優遇措置やスキルマップの作成により、従業員の能力を評価することも重要です。
そうすれば、会社が求める人材を視覚化でき、賃金を適正に分配することができます。 スキルマップを活用すれば、従業員のやる気を引き出すとともに、企業や個人が不足する能力を理解・共有することができ能力の向上に役立ちます。
また、最低賃金は今後も上がっていくことが予想されるため、費用対効果の低い手当の廃止や整理を検討する必要があります。


・賃金以外の待遇改善
最低賃金引き上げに際して賃上げを行うことも重要ですが、その分人件費も増大してしまいます。 優秀な人材の離職対策や他社との差別化を図り採用競争を有利にするためにも企業のブランド力を高めることは重要です。
福利厚生の充実や職場環境の改善、ワークライフバランスの実現などの取り組みが考えられます。


・賃上げ促進税制の適用
賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、従業員の給与支給額を前年度より増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
最低賃金の引き上げにより人件費が前年度より増加することは充分に考えられるため、決算申告時に適用することを忘れないようにしましょう。


■最後に

今年度の最低賃金の引き上げ額は、物価上昇を踏まえてこれまでで最も大きくなっています。
発行後は多くの企業が時給を引き上げ採用競争が激しくなることが予想されるため早めの求人、採用活動が必要となってくるかもしれません。
最低賃金引き上げに伴って企業が取るべき対策について、少しでも本記事を参考にしていただければ幸いです。
最低賃金は雇用形態に関わらず全ての労働者に適用されるため下回っていないか今一度確認しておきましょう。


最低賃金引き上げについてご不明点等ございましたら米本合同税理士法人までご連絡下さい。


伊藤 紘人

 

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