コラム
非上場会社の存続に向けて事業承継を考えてみませんか

非上場会社の存続に向けて事業承継を考えてみませんか

※このコラムは「三井住友カードBiz」2022年11月号に掲載されます。


非上場会社の承継を考える際には、経営のノウハウ等の他に、株式の引継ぎも考える必要があります。
株式の引継ぎは、先代経営者から後継者へ株式の贈与をするのが一般的な方法ですが、毎年利益を出しており純資産が膨らんでいる会社であれば、年々、株価が高くなる傾向にありますので、引継ぎの際に多額の贈与税がかかってしまう問題があります。
また、既に株価が高い会社については、毎年、贈与税のかからない範囲で贈与をした場合であっても、引継げる株式数が少なく、贈与が間に合わないケースがほとんどです。


贈与を実行する前に先代経営者が死亡した場合には、相続として引継ぐことになり、その際には相続税がかかります。
相続した金銭で相続税を納税できれば問題ないのですが、株価が高い会社については、死亡退職金等の金銭をもってしても納税が難しいケースも少なくありません。


このような問題から平成21年度税制改正において、事業承継税制が設けられました。
この制度は、事業が続く限りは非上場株式の引継ぎに係る贈与税、相続税を猶予する制度になりますが、適用要件が厳しいことや、全体の株式の3分の2までしか猶予の対象にならず、相続の納税猶予の場合には相続税額の80%相当額の猶予ということもあり、使い勝手も悪くあまり適用されていませんでした。


しかし、平成30年度の改正によって特例措置が設けられ、令和9年12月31日までの期間の引継ぎに限り、要件が大幅に緩和されました。
この特例措置を適用する場合には、令和6年3月31日までに都道府県に対し特例承継計画(先代経営者や後継者の氏名、今後5年間の事業計画を記載したもの)の提出が必要となります。


緩和の内容としては、
(1) 猶予対象株式の増加
(2) 相続税の猶予額の拡大
(3) 複数人(先代経営者とその配偶者等)から複数人の後継者への承継も適用対象
(4) 雇用確保要件の緩和
(5) 納付が必要になった場合の再計算
(6) 相続時精算課税の適用対象者拡大
があり、表にまとめると以下のようになります。


内容 原則 特例
(1) 納税猶予対象株式 発行済株式総数の2/3に達するまで 取得した全ての株式
(2) 納税猶予税額 納税猶予の対象となる株式に係る相続税の80% 納税猶予の対象となる株式に係る相続税の全額
(3) 雇用確保要件 相続時から5年間の平均雇用が8割未満となった場合には納税猶予が打ち切りとなる 相続時から5年間の平均雇用が8割未満となった場合であっても、その理由を記載した書類を都道府県に提出した場合には納税猶予が継続される
(4) 先代経営者の要件 先代経営者1人から後継者の承継が対象 複数人(代表者以外の者を含む)から後継者への承継も対象となる。
(5) 後継者の要件 代表権を有している後継者1人への承継のみ適用対象 代表権を有する複数人(最大3名)への承継も適用対象
(6) 猶予税額を納付する必要が出た場合の納付税額 株式の贈与時、相続時の相続税評価額を基に計算した金額 株式の譲渡対価の額、解散時における相続税評価額等を基に納付税額を再計算その納付金額が猶予税額を下回る場合には、その差額を免除
(7) 相続時精算課税制度の適用対象者 贈与者:贈与の年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母
受贈者:贈与の年の1月1日において18歳以上の贈与者の子、孫等(直系卑属)
贈与者:贈与の年の1月1日において60歳以上
受贈者:贈与の年の1月1日において18歳以上(推定相続人以外の後継者でも適用対象)

本来、全体の株式の3分の2までが対象であり、相続税は80%のみ猶予だった制度ですが、この特例措置を使うことにより、全ての株式が対象で100%の猶予が可能となっています。


また、会社の存続が難しくなった場合(債務超過等に陥った)に、要件を満たさなくなってしまったときは、本来、猶予された税額をそのまま納付する必要がありましたが、特例措置では株価を再計算することができ、その結果、猶予額が減少した場合には、その減少後の猶予額の納付で済むことになったため、納税猶予を満たさなくなった場合のリスクも軽減されています。


この制度は都道府県の認定が必要であり、その認定を受けるためには、先代経営者、後継者、適用する会社それぞれで様々な要件が設定されており、この要件を納税猶予が続く限りは満たさないといけません。


【認定を受けるための主な要件】
(1) 先代経営者
・引継ぎの直前において筆頭株主であること
(後継者が筆頭株主の場合には、後継者の次に株式を多く有することが必要です)
・引継ぎの直前において同族間で過半数の議決権を有すること
・贈与の場合には、贈与前に代表権を有しないこと
(2) 後継者
・引継ぎ直後において同族間で過半数の議決権があること
・引継ぎ直後において筆頭株主であること
・贈与の場合には、18歳以上かつ贈与の日までに3年以上会社の役員であること
・引継ぎされた株式を保有し続けること
(3) 適用する会社
・中小企業者であること
・上場会社、風俗営業会社でないこと
・事業実態があること
・売上があること
・引継ぎ時から5年間の平均の従業員数が、引継ぎ時の従業員数の8割を下回らないこと


また、納税猶予となるため、猶予額+利子税相当額の担保の提供も必要になります。(適用を受ける株式の全部を担保に提供する場合には、猶予額+利子税相当額の担保を提供したものとされます。)


こういった制限がかかることから、この制度は全ての会社に適用すべきものではなく、本当に必要な会社でのみ適用すべきものだと考えています。 適用を考える前に、まずは自社の株価がどのくらいあるのか、将来の会社をどうしていきたいのか等を明確にする必要があります。


弊社では、この制度の適用をすべきかどうかを先代経営者、後継者との厳密な打ち合わせの上、検討し実行いたします。 事業承継を検討されている場合は、お気軽にご連絡ください。

税理士 足立 佳孝

 

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