コラム
生前贈与による節税対策に制限が!?相続税と贈与税の一体化について説明します

生前贈与による節税対策に制限が!?相続税と贈与税の一体化について説明します

※このコラムは「三井住友カードBiz」2023年5月号に掲載されます。


相続税と贈与税の一体化は、下記の理由により数年前から検討され続けています。

1.高齢世代に資産が集中している状況で、若年世代に資産を移転するには贈与税率が高い。

2.富裕層は相続税対策として生前贈与を幾度と行うことにより、高額の相続税を減らすことが出来るため、格差が固定化され不公平感が生じる。

3.外国では、贈与や相続のタイミングによって税負担が変わらない制度となっている。


令和5年度税制改正により、相続税と贈与税の一体化に向けて贈与に関する制度が変わりました。
今回はその内容を説明させていただきます。


■相続税と贈与税の関係
相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産額に応じて税額が計算されます。
そのため、生きているうちに贈与により財産を少なくすれば、相続税を減額させることも出来てしまいます。
贈与税はこういった行為を防止する目的で出来ました。故に、贈与税は相続税の補完税と言われています。


相続税は被相続人の全ての財産額によって税額が決まりますが、贈与税は贈与した財産額によって税率が決まるため、相続時に見込まれる相続税率よりも低い税率で贈与を行うことにより、相続税、贈与税トータルの納税額が低くなるため、こういった理由から生前贈与は節税対策としてよく使われてきました。


■生前贈与加算
【生前贈与加算とは?】
生前贈与は相続税の対象となる財産を減らすことが出来るため、相続税の節税対策として広く使われています。
しかし、無制限にこれを認めてしまうと相続の直前であっても贈与を行うことにより、相続税を抑えることが出来てしまいます。

そのため、相続開始前3年以内の贈与についてはその贈与はなかったもの(相続財産の持ち戻し)として、相続財産に含める生前贈与加算という制度により、相続開始前の駆け込み贈与を防いでいます。


【加算の対象者】
この生前贈与加算の対象者になる方は、「相続又は遺贈により財産を取得した者」とされています。
よって遺言書により財産を取得していない孫や相続権があっても相続財産を取得していない相続人については3年以内に贈与があった場合でも相続財産に含める必要ありません。
※相続財産を受け取っていない場合であっても生命保険金を受け取っている場合には、相続財産を取得したとみなされるため、生前贈与加算の対象者となります。


【改正内容】
令和5年度税制改正により、現行の持ち戻し期間である3年が7年へと変更されます。
また、持ち戻し期間のうち延長した部分である相続開始前3年超から7年以内の期間に受けた贈与については、その期間に受けた贈与額の合計額から100万円を控除した残額が加算されることになります。
この改正は“令和6年1月1日以後の贈与”から適用されます。
なお、相続開始日が令和9年1月以後、加算期間は順次延長され、加算期間が7年となるのは令和13年1月以後となります。令和8年12月以前に相続開始の場合には加算期間は3年であり、改正の影響は受けません。


■相続時精算課税
【相続時精算課税制度とは?】
相続時精算課税制度とは、一生涯で2,500万円までの非課税がある贈与の制度です。
この制度を適用する場合には、期限内に一定の届出書を提出する必要があり、一度この制度を使うと暦年課税贈与(毎年110万円の非課税枠の贈与)は適用できなくなります。
また、この制度により贈与をした額のトータルが2,500万円を超えると、超えた部分に対しては一律20%の贈与税が課税されます。
この制度を使うことにより、多額の財産を贈与税がかからずに子や孫へ渡すことも可能です。
しかし、贈与者が亡くなった場合には、この制度により贈与した全ての財産を相続財産に含めて相続税を計算しなおすことになります。(支払った贈与税は相続税から控除されます。)


【贈与者、受贈者の範囲】
この制度による贈与は、60歳以上の直系尊属(父母や祖父母など)から、18歳以上の直系卑属(子や孫など)に対する贈与について選択できます。


【改正内容】
令和5年度税制改正により、相続時精算課税を適用した場合には、現行の特別控除2,500万円とは別に、毎年110万円の基礎控除が使えるようになります。
また、相続時に持ち戻しされる財産の価額については、基礎控除110万円を控除した残額となるため、毎年110万円以内の贈与のみを行う場合であれば、7年間の持ち戻しする金額もなくなり、この制度を適用した方が有利になります。


その他、この制度により贈与を受けた土地又は建物が贈与後に災害によって一定の被害を受けた場合には、相続財産に加算する価額は、贈与時の時価から被害相当額を控除した残額となります。(現行は贈与時の時価を加算します。)
この改正は“令和6年1月1日以後の贈与”から適用されます。


現状では、生前贈与加算では孫に対して持ち戻しは原則ありませんが、今後、相続税や贈与税の一体化に向けて、孫に対しても持ち戻しする必要が出てきたり、持ち戻し期間がより長くなることも十分想定されます。
今回の改正によって、相続対策をする場合には今まで以上に早めに行う必要があります。
相続対策に対してお困りのことがあれば、ご連絡いただければと思います。


税理士 足立 佳孝

 

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