無料のサービスを利用して給与明細の電子化・ペーパーレスを始めませんか
※このコラムは「三井住友カードBiz」2023年7月号に掲載されます。
業務効率化のため給与明細の電子化・ペーパーレス化に取り組みたいとお考えの方は多いと思います。
何から始めたらいいかわからないなどの不安のある方は、利用中の給与計算ソフトは変えずに、無料プランを提供しているクラウドサービスの「Web給与明細システム」を利用して、まずは給与明細の配布だけを電子化・ペーパレス化して効果を試してみてはいかがでしょうか。
■給与明細の電子化・ペーパーレス化とは
従業員の給与明細を書面ではなく電子化してインターネットなどを通じて交付し、ペーパーレス化することです。
給与明細書の電子化は2006年の税制改正によって認められ、2007年1月1日以後に交付する給与明細や源泉徴収票などについて、一定の要件の下で書面ではなく電子化して交付できるようになりました。
現在法律で認められている電子交付の方法は次の3つです。
1.電子メールを利用する方法
2.社内LAN・WANやインターネットなどを利用して閲覧する方法
3.CDなどの媒体に記録して交付する方法
一般的には、メールで給与明細書のファイルを添付送信してペーパーレスで交付する方法や、クラウドサービスを活用して従業員がWeb上で給与明細書を閲覧できるようにする方法が多く採用されています。
今回のコラムでは無料プランを提供している「Web給与明細システム」を中心にご紹介いたします。
参考:国税庁Q&A(源泉徴収票等の電子交付とはどのような制度か)
■給与明細の電子化・ペーパーレス化のメリット
【コストと業務時間の両方を削減できる】
紙の明細書を発行して手渡しする場合に比べて、明細書の印刷代や郵送代などのコストが不要になります。
また印刷・仕分け・封入・配布にかかる業務時間を削減できます。
【人的ミスの防止につながる】
紙の明細書の場合は、印刷時に「印刷ミスやプリンタからの取り忘れなどにより他の従業員の目に触れてしまう」、封入や配布時に「別の人の明細書を封入・配布してしまう」といった人的ミスが発生する恐れがあります。
また、紙の明細書を取り扱うときは、他の従業員の目に触れないように、作業場所や作業時間にも気を配る必要があります。
電子化することにより人的ミスの防止や業務負担の軽減につながります。
【従業員にもメリット】
従業員はスマートフォンやPCなどからいつでもどこでも明細書を確認でき、過去の明細書も検索して確認できます。
また、紙の明細書に比べて紛失するリスクもありません。
■給与明細の電子化・ペーパーレス化のデメリット
【セキュリティ対策が必要】
電子化することによる新たな情報漏えいリスクや脅威への備えが必要です。
たとえば、クラウドサービスを利用する場合は、管理者のIDやパスワードが流出すると一度に大量の個人情報が流出する恐れがあります。適切なID管理ルールの取り決めや、給与担当者が利用するPCへセキュリティ対策を実施します。
【電子化にあたり業務手順を変える必要がある】
利用する「Web給与明細システム」が指定する形式にあわせて、明細書データを用意する必要があります。大手メーカーの給与計算ソフトをお使いであれば、給与計算ソフトから出力したデータを加工不要でそのまま取り込めるケースもあり手間がかかりません。形式が一致しない場合はエクセルなどを利用して手作業でデータを加工するといった負担が発生する場合があります。
【導入には従業員の承諾が必要】
給与明細等の電子交付は「従業員の承諾を得ること」が条件となっています。承諾を得られなかった従業員については、従来通り別途紙で配布する必要がありますので、承諾を得られなかった従業員がいた場合の手間やコストも考える必要があります。
承諾を得るにあたり法令上決まった書式はありませんが、次のような事項を通知して承諾を得ることになっています。
1.電子交付する書類の名称(例:給与明細書)
2.電子交付する方法(例:A社のWeb給与明細システムにて交付)
3.記録方法(例:スマートフォンまたはPCで表示、表示後にPDF形式での保存が可能)
4.交付予定日(例:給与支給日に交付)
5.交付開始日(例:2023年〇月×日)
なお、令和5年度税制改正において、「給与所得の源泉徴収票」及び「給与等の支払明細書」については、支払者が受給者から電子交付の承諾を得ようとする際に、「支払者が定める期限までに承諾に係る回答がない時は承諾したものとみなす」旨の通知をあらかじめ受給者に行い、上記期限までに受給者からの回答がなかった場合には、電子交付の承諾があったものとみなされることとなりました。
承諾の取得方法については利用する「Web給与明細システム」によっては、従業員の意思確認ができる機能を用意しているものもあります。従業員が初めてシステムを利用するときに「電子交付に関する承諾書」が表示され、従業員に[承諾する]を選択してもらい意思確認する方法も可能ですので、少しでも手間を省きたい方はシステムを選ぶ条件の一つとして検討してください。
■無料プランを提供しているWeb給与明細システム
無料で利用できるWeb給与明細システムを3つご紹介いたします。
※本コラムに掲載の情報は2023年5月末に確認したものです。正確な情報は各社の公式サイトをご確認ください。
各社により異なりますが、無料プランには主に次のような制限があります。
1.利用できる従業員数の上限が決まっている
2.過去1年分など明細を確認できる期間に制限がある
3.サポートがない
4.広告が表示される
サービス名 | スマ給 |
概要 | スマ給は株式会社アグリードが提供するWeb給与明細システムです。 利用する人数、給与明細の保存期間が設けられておらず完全無料で利用できます。 |
利用できる従業員数 | 制限なし |
給与明細の保存期間 | 制限なし |
広告表示 | なし |
サポート | なし(有償でのメールサポート、初期設定サポートあり) |
公式サイト | https://aglead.co.jp/sma9/ |
サービス名 | HRMOS勤怠 |
概要 | HRMOS(ハーモス)勤怠はIEYASU株式会社が提供するクラウド勤怠管理ソフトで、機能の1つとしてWeb給与明細機能が提供されています。 給与明細機能のみの利用であれば人数制限なく無料で利用できます。 |
利用できる従業員数 | 制限なし |
給与明細の保存期間 | 1年 |
広告表示 | あり |
サポート | なし |
公式サイト | https://payslip.ieyasu.co/ |
サービス名 | SmartHR |
概要 | SmartHRは株式会社SmartHRが提供するクラウド人事労務ソフトで、機能の1つとしてWeb給与明細機能が提供されています。 利用人数が30人までなら無料で利用できます。 |
利用できる従業員数 | 30人まで |
給与明細の保存期間 | 制限なし |
広告表示 | なし |
サポート | なし |
公式サイト | https://smarthr.jp/function/salary/ |
■無料で利用できるWeb給与明細システムを選ぶポイント
・自社に必要な機能が揃っているかを確認します。
→明細書の閲覧に対応する機器(PC、スマートフォン、専用のアプリ)
→支給日にメール等で従業員に明細書の公開を通知する機能の有無と要否
→給与明細書以外(源泉徴収票など)の電子交付機能の有無と要否
・利用中の給与計算ソフトと連携ができるか
→Web給与明細システムの明細書データ取り込み設定を行うだけで簡単に取り込むことができるか
・無料プランで利用できる従業員数や保存期間の制限に問題がないか
■有料プランや給与計算一体型システムへの移行
無料プランを利用して効果が実感できたのであれば、必要に応じて有料プランへの移行をご検討ください。
近いうちに給与計算ソフトの変更をお考えであれば、給与計算ソフトの機能としてWeb給与明細を利用できるクラウド給与計算ソフトへの変更がおすすめです。
Web給与明細システムへデータを取り込む手間が省け、利用するサービスを一つにまとめることが可能です。
弊社ではWeb給与明細システムやクラウド給与計算ソフトの導入サポートを行っております。ご興味のある方は、一度お問い合わせをお願いいたします。
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