米本合同税理士法人

家族に財産の管理を託す家族信託

※このコラムは「三井住友カードBiz」2024年8月号に掲載されます。

家族に財産の管理を託す家族信託について説明します。
家族信託とは、自分の財産（不動産・有価証券・預貯金など）を、信頼できる家族に託し、管理・処分を行う財産管理手法をいいます。

家族信託は「委託者」、「受託者」、「受益者」の三者間で行われ、「委託者」と「受託者」の間で家族信託契約を締結することになります。

「委託者」：財産の所有者で、自分の財産を託す人。

「受託者」：委託者から託された財産の管理・運用・処分を行う人。受託者を複数設定することも可能です。

「受益者」：信託された財産から出た利益を受け取る人。受益者を複数設定することも可能です。

■家族信託の手続き

家族信託の手続きについては、次の流れで行います。

(1) 家族信託の契約の内容について、家族間で話し合いを行う
委託者と受託者はもちろんですが、その二者間だけで話し合いを進めると、後にその他の親族と揉め事にも繋がる可能性がありますので、家族全員が納得できる状態で契約内容を決めることが重要です。

(2) 信託契約書を作成する
(1) で決めた内容をもとに、信託契約書を作成します。インターネット上のひな形もありますが、お勧め出来ません。家族信託は細かいところまで決めることが出来る分、契約書も細かく作らなければいけません。

(3) 公正証書にて信託契約書を締結する
家族信託契約は、公正証書にする規定はありませんが、家族信託用の口座を開設するためにも公証役場にて公正証書にすることをお勧めします。

(4) 家族信託用の銀行口座を開設する
受託者は、信託財産と受託者本来の財産を分けて管理する義務があります。そのためにも、家族信託用の口座を開設する必要があります。また、この口座を開設できる金融機関には限りがありますので、事前に確認が必要です。

(5) 信託財産に不動産がある場合には、家族信託の登記を行う
不動産が信託財産の場合には、所有権が委託者から受託者へ移行します。また、信託財産である不動産であることが分かるように信託の登記が必要です。

(6) 信託契約に沿って、財産の管理等を実行する
受託者が信託契約の内容のとおりに、財産の管理・運用等を実行します。また、信託財産に関する収支の記録も行う必要があります。

■信託契約に記載する主な内容

信託契約書には主に次の内容を記載します。

(1) 信託の目的
生活費等に使用して欲しい・不動産貸付業の承継・遺言の代用等、信託の目的を記載します。

(2) 受託者
複数人設定することも可能です。

(3) 受益者
複数人設定することも可能です。

(4) 信託財産
農地など、信託財産に設定できない財産もあります。

(5) 信託財産の用途、管理方法、管理権限
不動産の場合には、売却することについても権限を与えるかどうか、預貯金の場合にはどのような用途で使用するか等を記載します。

(6) 信託期間
委託者又は受託者が死亡した時など、信託の期間を設定します。

(7) 信託財産の帰属先（遺言機能）
信託期間が終了した際に、誰に帰属するのか等を記載します。また、信託財産を受け取った方が亡くなった場合の次の帰属者を決めることも可能です。

■家族信託に関する税金

家族信託を行った場合には、不動産がある場合には登記が必要になりますので、登録免許税がかかりますが、不動産取得税は非課税となっています。
また、委託者と受益者が異なる場合には、受益者が受けた利益に対しては贈与税が課税されます。

家族信託は、財産の管理を細かい部分まで受託者に委託ができます。
委託者、受託者共に契約が出来る状態（意思能力がある状態）で契約を締結するため、仮に委託者が認知症になった場合でも効力が継続しますので、認知症対策として使われるケースが多いです。

家族信託は、認知症対策としては事前に細かい部分を設定できるため、万能と言われる部分もありますが、受託者の負担が大きい、費用が掛かるといったデメリットもあります。
また、そもそも家族間の仲が悪い、信託する財産がない等、家族信託をしない方がいいケースもあります（その場合は、後見制度や遺言書等のその他で対策をします。）ので、認知証対策でお悩みの方は、お問い合わせいただけると幸いです。