先代名義の不動産があると要注意!
不動産の相続登記の義務化を説明します
※このコラムは「三井住友カードBiz」2025年1月号に掲載されます。
■ 相続登記が義務化された理由
近年、相続登記がされないことによって、所有者が不明な土地が全国で増加しています。
この所有者が不明な土地については、適切な管理がされないことによる不法投棄や雑草の繁茂、不法占有者等の周辺の環境悪化や、災害等の危険があり工事が必要となった場合でも所有者と連絡がとれないため、工事が進まない等の公共工事の阻害が社会問題になっています。この問題を解決するため、令和3年に法律が改正され、これまで任意であった相続登記が義務化されることになりました。
■ 相続登記の義務化について
【1】開始の時期、登記の期限
相続登記の義務化は、令和6年4月1日から開始しています。
相続登記の期限は「不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内」となっています。
また、令和6年4月1日より前に相続した不動産で相続登記がされていないものについては、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。
この不動産を相続で取得したことを知った日というのは遺言書がある場合と遺産分割協議をする場合とで時期が異なります。
(1) 遺言書がある場合
遺言書がある場合には、被相続人が亡くなったことを知り、遺言書によって不動産を相続したことを知った日となります。
(2) 遺産分割協議が成立した場合
相続人同士の話し合い《遺産分割協議》が成立した日となります。
(3) 遺産分割協議が成立しない場合
相続人同士の話し合いの結果、遺産分割協議が成立しない場合もあります。
この場合には、相続人申告登記の申し出、又は、法定相続分による相続登記の申請が必要になります。
【2】義務の対象範囲について
相続登記の義務の対象となる方は、不動産を相続で取得した方になります。
そのため、相続で不動産を取得しなかった方については相続人であったとしても相続登記の義務はありません。
【3】過料について
登記の期限内に相続登記をしなかった場合には、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。《正当な理由がある場合を除きます。》
過料が科される流れについては、登記官が義務違反を把握した場合に催告書が送られその催告書に記載された期限内に登記がされない場合、登記官は裁判所に対してその義務違反を通知し、その通知を受けた裁判所において過料が科する旨の裁判が行われるという流れになります。
また、正当な理由については、相続人が極めて多く、登記に必要な書類の収集や他の相続人の把握に時間を要する場合や、遺言書の有効性を争っている場合、相続人が重症である場合、経済的な問題で登記申請にかかる費用の負担が難しい場合などがあります。
【4】相続登記がすぐにできないとき
遺産分割協議が成立していない場合等により、期限内に相続登記をすることが困難な場合には救済制度として「相続人申告登記」を行うことにより、相続登記の義務を履行したことになります。
しかし、この申出については、自分が相続人の一人であることを法務局に申出るだけのものになりますので、不動産の所有権を取得したことにはならず、不動産の売却や不動産を担保に入れることはできません。
この申請は相続人が複数いる場合でも単独で申出ることができ、申出をした相続人のみが登記の義務を履行したことになります。《複数の相続人分の申出をまとめてすることも可能です。》
■ 相続土地国庫帰属制度について
相続等した土地が遠方にあり利用することがない、周りに迷惑がかからないよう管理する負担が大きいといった理由により、土地を手放したいというケースが増えています。
このような土地については、将来所有者不明土地となる可能性が高いため、その予防策として令和5年4月27日から相続等により取得した土地のうち、一定の要件を満たすものについては、土地を国庫に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」が開始しています。
【1】申請できる人
相続等により土地を取得した方《共有者については相続により取得していない場合であっても申請が可能となります。》 また、令和5年4月27日より前に相続等により土地を取得した方についても対象となります。【2】申請先
申請先は、申請をする土地がある都道府県の法務局・地方法務局《本局》の不動産登記部門となります。
【3】引き取ることができない土地
国が引き取ることができない土地については以下のものがあります。
《申請をすることができない土地》
(1) 建物がある土地
(2) 担保権や使用収益権が設定されている土地
(3) 他人の利用が予定されている土地
(4) 土壌汚染されている土地
(5) 境界が明らかでない土地・所有権の範囲等について争いがある土地
《承認を受けることができない土地》
(1) 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
(2) 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
(3) 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
(4) 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
(5) その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
■ まとめ
不動産登記をしない場合には、過料が科される可能性があるだけでなく、長い期間登記をしないことにより、相続人の把握が難しくなるため、より一層相続登記が困難となり、不動産売却ができないというリスクも生じます。
こういったリスクを免れるためにも登記が終わっていない不動産がある場合には、司法書士に依頼する等して期限内に登記の手続きを行う必要があります。
先代名義の不動産がないか今一度確認してみてください。
当社では、不動産登記についての司法書士の紹介も可能です。
お困りの際はお気軽に米本合同税理士法人にご相談ください。
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